インターネットやSNSでは、職場で周囲を攻撃したり精神的に追い詰めてくる中高年女性を「モラハラおばさん」と呼ぶことがあります。
ただ、本来「おばさん」という言葉には年齢差別的なニュアンスもあり、誰かを一方的に悪者にするレッテル貼りになりかねません。
この記事では、あえて検索で使われやすい「モラハラおばさん」という言葉をタイトルに使いつつも、年齢や性別ではなく「モラルハラスメントという行動」に焦点を当てて解説していきます。
あなたの身の回りにいる「いつも人を傷つける言動を繰り返す人」を理解し、自分を守るための考え方と対処法をお伝えします。
モラルハラスメントとは？パワハラとの違い
モラルハラスメント（モラハラ）は、殴る・蹴るといった身体的暴力ではなく、言葉や態度、無視や陰口などによって人を精神的に追い詰める行為を指します。
直接的な暴言だけでなく、嫌味やため息、視線や態度でじわじわと相手を追い詰めていくのが特徴です。
パワハラが「立場の優位性を利用した嫌がらせ」であるのに対して、モラハラは必ずしも上司から部下だけに起きるとは限りません。
同僚同士、先輩・後輩、さらには「ベテランパートさん」や「古株事務職」から新入社員へのモラハラのように、職位ではなく「空気上の立場の強さ」を利用して行われることも多いです。
「モラハラおばさん」と呼ばれやすい人の行動パターン
ここからは、いわゆる「モラハラおばさん」と呼ばれてしまいやすい人に見られがちな行動の特徴を整理します。
あくまで「傾向」であり、当てはまるからといって必ずモラハラ加害者とは限りませんが、自分を守るための「危険サイン」として参考にしてください。
ルールやマイルールを振りかざす
会社の正式なルールではなく、自分が「正しい」と信じているやり方を絶対視し、それに従わない人を強く攻撃することがあります。
例えば、提出物のクリップの留め方や書類の順番など、仕事の本質とは関係ない部分に強くこだわり、それを守らない人を「非常識」「社会人失格」と断言するケースです。
このような人は、自分のマイルールを守らせることで、自分の立場の強さや正しさを確認しようとする傾向があります。
態度を急に変える「ターゲット」を決めて攻撃する
好きな人にはとても優しいのに、一度「気に入らない」と判断した相手には極端に冷たくなることがあります。
特定の人にだけ挨拶を返さない、話しかけられてもため息や舌打ちで返すなど、あからさまな態度の差をつけるのもモラハラの一つです。
この「ターゲット化」が進むと、周囲の人にも「あの子は使えない」「あの人はダメ」とネガティブな情報を広めて孤立させようとする場合もあります。
陰口・噂話で人間関係をコントロールする
本人のいないところで悪口を繰り返したり、事実とは違う情報を「聞いた話なんだけど」とさりげなく広めるのもモラハラ行動の一つです。
陰口には二つの目的があります。ひとつはターゲットの評価を下げること、もうひとつは「自分の味方を増やして安心すること」です。
結果として、職場の空気がピリピリし、人間関係のトラブルが連鎖していきます。
失敗やミスをいつまでも責め続ける
過去の小さなミスを何度も持ち出して責めるのも特徴です。
「前にも同じことやったよね」「何回言わせるの」「またあなた？」といった言葉で、相手に「自分はダメな人間だ」と思わせるような言動を繰り返します。
一度謝って改善策も取っているのに、いつまでも許さず責め続けるのは、相手を成長させるためではなく、自分の優位性を保つためであることが多いです。
モラハラをする心理、なぜ人を攻撃してしまうのか
モラハラ行動は、単なる性格の悪さだけで説明できるものではありません。
その背景には、多くの場合「不安」「劣等感」「承認欲求」といった心の問題が隠れています。
強そうに見えて、実は自己肯定感が低い
モラハラ行動をとる人は、自信満々に見えることが多いですが、心の奥では「自分は価値がないのではないか」という不安や劣等感を抱えていることがあります。
その不安を見ないようにするために、他人を見下したり、粗探しをして「自分の方が上だ」と感じられる材料を集めようとします。
つまり、相手を攻撃しているようでいて、実は「自分を守るため」に必死になっている状態とも言えます。
過去の職場や家庭での経験が影響していることもある
家庭や前職でモラハラ・パワハラを受けて育った人は、「人間関係とはそういうものだ」と無意識に学んでしまっている場合があります。
怒鳴られて育つと、「相手を従わせるには怒鳴ればいい」と覚えてしまうのと同じように、嫌味や無視で人をコントロールしようとするパターンを身につけてしまうことがあります。
本人に「自分が加害者になっている」という自覚が薄く、「自分だって昔はもっとひどい目にあった」と感じているケースも少なくありません。
変化や若い世代への不安・嫉妬
職場のルールやシステムが変わり、若い世代の価値観が強くなっていく中で、「自分の居場所がなくなるかもしれない」という不安を抱える人もいます。
特に長年同じ職場にいるベテランは、「自分のやり方」が否定されることに強く抵抗を感じることがあります。
その不安や嫉妬が、「最近の若い子は」「あの人だけ評価されてズルい」といった言葉となり、モラハラとして表に出てくることも多いです。
モラハラおばさんを生みやすい職場環境
モラハラ行為は、個人の性格だけの問題ではなく、「その行動が許されてしまう環境」によって強化されます。
| 環境の特徴 | 生じやすい問題 |
|---|---|
| 人間関係の派閥ができている職場 | 派閥のボス的存在がモラハラをしやすくなり、逆らえない空気が生まれる |
| 上司が部下の感情や人間関係に無関心 | 被害を訴えても「よくあること」と片付けられ、モラハラが放置される |
| 長年いる人ほど発言力が強く、評価も曖昧 | 「古株だから言っても無駄」と諦めムードになり、我慢する人が増える |
| 人手不足で誰も辞めてほしくない状況 | 加害側の機嫌を取るような空気が生まれ、被害者が泣き寝入りしやすい |
このような環境があると、モラハラ気質の人が伸び伸びと振る舞えてしまい、被害が拡大していきます。
モラハラ被害に遭いやすい人の特徴と勘違い
モラハラ加害者は無作為に誰彼かまわず攻撃するわけではなく、「やりやすい相手」を選ぶ傾向があります。
しかし、それは決して「あなたが悪いから」ではありません。
真面目で責任感が強く、断ることが苦手
頼まれた仕事を断れない、ミスをすると必要以上に自分を責めてしまう、といった人は、モラハラ加害者から見ると「扱いやすいターゲット」になりやすいです。
少しキツく当たっても辞めずに頑張ってしまうため、加害者の行動を「学習強化」してしまうこともあります。
「自分さえ我慢すれば」と思ってしまう
波風を立てたくない、人間関係を壊したくないという思いから、理不尽な扱いを受けても誰にも相談せず我慢してしまう人も、標的になりやすいです。
しかし、我慢を続けることでモラハラはエスカレートし、心身を壊してしまう危険性が高まります。
今日からできるモラハラおばさんへの実践的な対処法
ここからは、実際にモラハラを受けたときに試せる対処法を紹介します。
すべてを完璧にやる必要はないので、自分ができそうなものから取り入れてみてください。
感情ではなく「事実にだけ」淡々と対応する
モラハラ加害者は、相手が動揺したり泣いたり怒ったりすることで、「自分が優位に立てている」と感じやすくなります。
そこで、あえて感情的な反応を減らし、事実だけを淡々と返す対応が効果的なことがあります。
例えば、「あなたって本当に仕事できないわね」と言われたら、「この業務のどの点が問題だったか教えていただけますか」と事実確認に話を戻していきます。
人格否定の言葉に対して、仕事の具体の話に引き戻すイメージです。
距離を取る工夫を少しずつ増やす
完全に関わらないことが難しい場合でも、距離を少しずつ取る工夫はできます。
休憩時間をずらす、なるべく別の人と一緒にいる、雑談の輪に長く留まらないなど、「一対一の時間を減らす」だけでも、ダメージが軽減されることがあります。
日々の出来事を記録に残す
いつ、どこで、どんな言動をされたのかを簡単でよいのでメモしておくことは、自分を守る上でとても重要です。
後から第三者に相談する際、感情だけでなく具体的な記録があることで、状況が伝わりやすくなります。
スマホのメモ帳や日記アプリなどに、「年月日」「場所」「相手の発言」「自分の気持ち」を残しておくとよいでしょう。
上司・人事・外部機関に相談するときのポイント
モラハラの程度や頻度が強く、日常生活にも支障が出ている場合は、職場の上司や人事、労働相談窓口など、第三者への相談も検討する必要があります。
相談するときは、以下のような点を意識すると、話が伝わりやすくなります。
| ポイント | 具体例 |
|---|---|
| 感情ではなく事実から話す | 「毎週のミーティングで、私だけ繰り返し『使えない』と発言されます」など客観的な描写を意識する |
| 記録やメールなどの証拠を持参する | メール・チャット履歴、メモなどを見せながら説明すると説得力が増す |
| 自分が望む対応をはっきり伝える | 「配置換えをしてほしい」「注意だけでいい」「まずは話を聞いてほしい」など、希望を言葉にする |
相談は「弱いからするもの」ではなく、「自分を守り、組織を健全にするための行動」です。
一人で抱え込まずに、頼れる人や機関を活用していきましょう。
心と体を守るための対策、恋愛・プライベートへの影響にも注意
職場でモラハラを受け続けると、仕事中だけでなく、恋人や家族との時間にも影響が出てくることがあります。
イライラを持ち帰ってしまったり、「どうせ自分なんて」と自己肯定感が下がり、恋愛や人間関係全般に悪影響が出ることも少なくありません。
意識してほしいセルフケアとして、次のようなものがあります。
- 信頼できる友人やパートナーに「出来事」を共有し、感情をため込まない
- 仕事とプライベートの時間を意識的に区切るため、帰宅後のルーティンをつくる
- 睡眠・食事・運動など、基本的な生活習慣を整え、心身の土台を安定させる
恋人やパートナーに対しては、「愚痴を聞いてほしいだけなのか」「解決策を一緒に考えてほしいのか」を最初に伝えると、お互いの負担が軽くなることもあります。
退職・異動を考えるラインとは？逃げることは負けではない
どれだけ対処しても改善が見られず、心や体の不調が続く場合、「逃げる」選択肢も現実的に考える必要があります。
メンタル不調で長期休職や退職を余儀なくされるよりも、早めに環境を変えた方が、長い目で見てあなたの人生にとってプラスになることも多いです。
例えば、次のような状態が続いている場合は、真剣に職場を変えることを検討するサインと言えます。
・出勤前に涙が止まらない、動悸や吐き気が出る
・休日も仕事のことが頭から離れず、気分転換ができない
・医療機関でうつ状態や適応障害などと診断された
環境を変えることは「負け」ではなく、「自分の人生を守るための戦略」です。
恋愛でも仕事でも、相手や環境が明らかに自分を傷つけている場合、「離れる」という選択肢はとても大切な自己防衛の一つです。
モラハラおばさんに振り回されないために
職場での「モラハラおばさん」は、あなたの能力や価値とは関係なく、相手側の不安や劣等感、環境の歪みが生み出した存在であることが多いです。
その人の言葉をすべて真に受けて、「自分が悪い」と思い込む必要はありません。
大切なのは、行動の特徴と心理を理解しつつ、
事実に基づいて淡々と対応すること、可能な範囲で距離を取ること、必要であれば第三者に相談すること、そして最後には「環境を変える」という選択肢も持っておくことです。
あなたの心と人生は、誰かのモラハラのために消費されていいものではありません。
この記事が、少しでもあなたの自己理解と、心を守るための一歩につながれば幸いです。
